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陰陽五行思想についての学びを記録をするブログです。

【周易】艮為山

いつも陰陽五行思想を学ばせていただき、ありがとうございます。

艮為山という卦は、艮(山)が二つ重なっている卦です。艮の象意は「止まる(登りきったところでどっしりと止まる)」であり、物事を思うにあたり自分の位地以上のことを望まず、自分の境遇以外のことを思わず、その位地境遇に即したことを思うのが良い、という意味です。

これに付随して、中庸における「富貴に素しては富貴に行い、貧賤に素しては貧賤に行い」という文章が参考にひかれていてハッとしました。何かを目指す、「自分とは違う何か」を目指すことの無益さ、ということを感じて。

人の目指す道というのは自分の内にありて外にはない、という考え方は大事だと最近よく思います。自分が目指すべきものは、自分の経験や立場、考えや自分が好きなもの、愛するものの中にこそあって、傍目に「羨ましく」あるいは「カッコいい」と思うものの中にあるのではないというのは、本質をついている気がします。「富貴は富貴に、貧賤は貧賤に」などと書かれると、階級主義のような誹りを受けがちなわけですが、それぞれに果たすべき役割や輝くことができる持ち場があり、それがある面では階級なり保有財産の多寡によるというのは至極まっとうなお話です。そのあたりを無視して「平等」にすることのほうにこそ、無理や混乱があります。対処すべきは「全員を平等にする」ことではなく「それぞれの立場個性を明確にし、果たすべき役割をはっきりさせる」ことであって、このあたりの理解と納得を促すことが、世の中が麗しく機能する秘訣ではないかと思います。

とはいえ、自分の内なる資質の先の何かを目指すことが必要なこともあるわけですが、その際のことについて、この卦には震の卦が隠れていて(普通は1番目から3番目の爻と4番目から6番目の爻に分けますが、それ以外の組み合わせ、この場合は3番目から5番目の爻を互卦といって、卦の意味を発展させるときに使います)、その意味は「動く」。なので、時期が来れば(環境が整うとかタイミングが合うとか)、動くことこそが吉としています。

単に上と下の卦を見るだけでは単に「止まる」ことに終始するのですが、こうして互卦から発展形を読める、というのも周易の面白いところです。

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